令和6(2024)年度

まちづくり月記2025年3月号

 「二月過ぎれば春遠からじ」と二月は厳冬を意味していましたが、本年も温暖化で平均気温が上がり、ハウスでは玉ねぎの播種作業も年々早まって、既に冬の終わりを予感させています。

 さて、新聞にこんな記事が載っていました。「好きで買っちゃいそうになるので」とおはぎなどが並ぶコーナーを素通りしてスーパーでの食料品の買い物を終えた年金頼りの八十一歳、一人暮らしの男性。六十五歳まで会社勤めで年金額は月十七万円と多い方だが、医療費や住宅料などを考えると「真綿で首を絞められているようだ」と物価高が暮らしを圧迫している現状が取材されていました。

 日本の家計貯蓄は二千百兆円と国民一人当たり平均千七百万円の貯蓄があるそうです。六十代では千九百万円、七十代は千八百万円とすごいなと感じますが、中央値では六十代は五百五十万円、七十代は六百五十万円とぐっと下がり、高齢者の四割以上が預金額は五百万円以下、貯金ゼロの方は二割を超えていると言われており、物価上昇が高齢者の生活に大きな影響を与えています。
 詐欺に何千万円も騙されたという新聞記事を見ると「あるところにはあるものだな」と思う一方で、家計を切り詰めて必死に暮らしている人がいる現実を目の当たりします。

 春の日差しが心を温かくしてくれる季節になります。町では全町民に五千円の町内商品券をお配りいたしました。物価上昇には追い付きませんが、たまには好きなものを買っていただけたら幸いです。

(広報おけと2025年3月号より)

まちづくり月記2025年2月号

 一月十二日、中央公民館で中学校の恩師や家族が出席するなか、晴れ着姿二〇名の門出を祝う成人祭が開催されました。一人ひとりに記念品のオケクラフトを贈呈する時、すっかり大人になった顔に幼い頃の面影と両親の顔が浮かび、私も思わず目頭が熱くなりました。新成人のスピーチは素晴らしく、「すごい教え子ですね」と中学校の担任だった山田先生に言うと、「本当に素晴らしいクラスだったんです」と間髪入れずに返事が返ってきました。

 新成人へのメッセージとして「牛・馬は一頭、鳥は一羽、魚は一尾、動物の数え方は死んだ後に残るものを言うんだ。人間は一名、俺たちは死んでも名を残すんだ。名に恥じぬよう生きているか、大事なことは能力でなく生き方、知識でなく行動、読むべきものは空気でなく自分の心だ。明日人生が終わると思って生きろ、永遠に生きると思って学べ、それでは元気で行ってきます」と南海の空に散った特攻隊員が後輩に残した言葉を紹介しました。

 戦後八〇年、戦争の記憶が遠くなる一方で、頻発化する災害や中東、ウクライナの様子がテレビに映し出されます。現代の幸せは多くの過ちや犠牲の歴史から成り立っていることは忘れてはなりません。そして、一人ひとりが意識し、行動しなければ不幸を繰り返すことになることを新成人の言葉ではなく、まさに自分自身を問う言葉と思いました。

 私が新成人に伝えたいことは「生きることは大変だけども、どんなことがあっても生きろ」です。いつかこの素晴らしい若者たちに再会できることを念願した成人祭でした。

(広報おけと2025年2月号より)

新年のご挨拶   人間万事塞翁が馬

 新年、明けましておめでとうございます。
 皆さまには、輝かしい新春を健やかに迎えられましたこと、心よりお慶び申し上げます。
 旧年中は、町政に対する格段のご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。

 振り返りますと、昨年1月1日に能登地震が発生し、9月には追い打ちをかけるような観測史上最大の大雨に見舞われるなど、被災された皆さま方に心よりお見舞い申し上げます。
 本町でも7月3日に半世紀ぶりの山火事が発生し、消防団員はじめ自衛隊等の関係機関の迅速な対応により、最小限の被害で鎮火できました。あらためて日頃からの訓練や災害に対する心構えの重要性を痛感したところであります。災害発生時の「自助・公助・共助」の重要性を共有し、計画の見直しや防災訓練の実施を進めてまいります。
 さて、皆さまのご支援のもと町政2期目を迎えることができました。本年は第6次総合計画の後半に入ります。少子高齢化・人口減少や福祉・医療の継続、交通確保、財政等課題が山積しておりますが、計画を見直しながら直面する様々な課題に取り組んでまいります。
 少子化が加速する中で労働力不足・人材確保が日本中で課題となっております。町外からの移住促進や後継者、担い手の確保に地域おこし協力隊制度の活用拡大や勤労者の住宅確保を着実に進めてまいります。協力隊員が全員置戸に残り、町民として生活していく運びになりました。オケクラフト研修生等が町内で起業し定着しています。これらの循環を拡大し、春にはさらに新しい風がおけとに吹くことを切望しております。
 課題となっておりました生ごみ収集につきましては、燃えるごみと同時処分とし簡便化を図ります。また、入学生減少により存続の危機にある置戸高校ですが、生徒募集の様々な取組を行ってまいりました。福祉を通じた人材育成の大切さと、伝統ある置戸高校の魅力を伝え、町内外から新入生をお迎えし、高校存続を図ってまいりたいと考えております。
 多くのご意見をいただきました児童館の建設に着手します。子どもたちが減少していますが、留守家庭児童会の利用にとどまらない多様な子どもたちが集う施設となるように活用を図り、安心して子育てをしたいという世代が増え、人口減少にブレーキを掛ける大きな政策となるよう取り組んでまいります。また、これまで低迷が続いたぶどう栽培は品種改良等の甲斐があって、置戸産100%のワインが復活されることになりました。40年間、諦めることなく続けてきた成果であり、一喜一憂することなく、今後もふるさと納税の返礼品充実のためにも特産品開発を進めてまいります。

 「人間万事塞翁が馬」ということわざがあります。本年は巳年で復活と再生の象徴、そして「努力が報われ、新しいことが生まれる年」と言われております。
 本町は大正4年の置戸村開村から110周年を迎えます。先人のご労苦に感謝を捧げるとともに、皆さまにとりまして喜びに満ちた健康で幸多き年となりますことを心からご祈念申し上げ、年頭のご挨拶といたします。

(広報おけと2025年1月号より)

まちづくり月記2024年12月号

 ふるさとカレンダーに目をやると、朝日を浴びたフクロウがじっとこちらを見る写真が冬の到来を告げています。

 さて、昭和二十六年に創刊された「置戸タイムス」が休刊となることが決まりました。先月の移動町長室でも「何とか継続できないのか」という声もあがり、町民はじめ多くの方にとって単に情報を伝えるという以上に、生活に溶け込んだ愛される地方紙であると再認識させられます。

 青年有志が「俺たちの手で町の発展を図る手立てとしよう」と郷土新聞が創刊されました。以来、その崇高な理念のもとで、七十三年もの長きにわたり毎週発行されたローカル新聞は誠に稀有であり、さらにタイムスの号外から「町政だより」「公民館だより」が派生し、昭和五十一年に現在の「広報おけと」発行に至りました。お知らせや課題・議論提供を行い、まちづくり・ひとづくりに大きく貢献されたものであるとここに深く感謝を申し上げます。

 この度の結論は経済的な問題だけではなく記者の高齢化等、如何ともしがたい課題の中での判断であり、町としましても情報過疎にならないような広報手段の新たな取り組みを模索してまいります。長年発行を支えられた歴代の役職員の皆様のご労苦に深甚なる敬意を表します。

 暑かった夏の記憶は朝晩の冷え込みで忘れる今日、うれしいことや悲しいこと、色々なことが思い出されます。町民一人ひとりに感謝申し上げ、皆様がご健勝にて新年をお迎えされますことをお祈りし、ペンを置きます。ありがとうございました。

(広報おけと2024年12月号より)

まちづくり月記2024年11月号

 澄み渡る青空のもと置戸神社の紅葉は本当に見事で、夜にはライトアップと昼とは違う趣を見せて境内には多くの方が訪れていました。その鮮やかな掌のようなモミジを見て、江戸時代の良寛和尚が末期に詠んだとされる「裏を見せ 表を見せて 散るもみじ」という句が浮かびます。音もたてずに、ひとひらまたひとひら揺られながら地に落ちてゆく様が、おごらず、怒らず、そして夕刻まで子どもたちと毬つきしていたと伝わる和尚の温和な生き様、そして人生の儚さも写し出しているように感じられる秋の句です。

 久しぶりに「OKハーモニー」のコンサートが開催されました。コロナ禍で外出自粛や人との接触が制限される中で小林薬店での街角ピアノから始まった活動です。プロ並みの演奏やその心地よい音色に安らぎや喜びを感じ、「置戸でもこんなことができるんだ」と私は勇気が沸きました。主宰の土田恵子さんから「町にはこんなに音楽好きの方がいますよ。町長も参加しては」と笑顔で声を掛けられ、「私のウクレレは恥ずかしい腕前で」と答えながらも「いつか私も」と秘めておりました。

 今回、闘病中の土田さんが「もう一度メンバーと音楽を」と計画されたものでしたが、前日に儚くもその思いは散ってしまいました。故人の思いを胸に残されたメンバーでのコンサート。今まで多くの町民に心に響く音楽と喜びや勇気をありがとうございました。謹んでご冥福をお祈りいたします。

(広報おけと2024年11月号より)

まちづくり月記2024年10月号

 「いつも怖い顔して」と妻に突然言われ、鏡の前に立ちまじまじと自分の顔を見て「いつからこんな顔だったんだろう」と口角を上げようとにらめっこしましたが老化なのか、なかなか思うような笑顔にはなりません。あきらめて「こんな顔のおじさんに声を掛けづらいだろうな」と職員を案じながら出勤する秋の朝。

 さて、九月は行事が目白押しで、挨拶を考えることが一日の日課の始まりです。健康と長寿を祝う集いでの挨拶を考えていたところ、ふと「先生」という字は「先に生まれた」と書くことから、「先に生まれた人からその経験を教えていただくことは素晴らしい」と、参加者の皆さんを「先生」と呼ぶという挨拶がいいかなと頭を巡らせましたが、「先生と呼ばれる程のバカでなし」ということわざも浮かびました。世の中にはいろいろな先生と呼ばれる人がいますが、必ずしも皆が尊敬されているわけではなく、批判を込めて呼んでいる人もいる。人間地位や名誉にあぐらをかいていてはだめだということです。私もその一人にならないように戒めなければと、この挨拶はボツかなと考えながら出勤しました。

 いろいろな行事が開催され、賑やかな秋、そして畑は作柄も良いようです。上手な挨拶より、みんながニコニコと笑いながら過ごせる食欲の秋がいいなと、残り少ない秋の温かさを感じながら、来年も笑顔でお会いすることができますよう、参加された皆さんのご健勝を願い、「さあ、次の挨拶」と、指で頬を上げながら公民館を後にしました

(広報おけと2024年10月号より)

まちづくり月記2024年9月号

 先日、「認知症の人の思い・家族の思い」という研修会が中央公民館で開催されました。講師である北海道認知症の人を支える家族の会事務局長の西村さんと認知症の「はるちゃん」の貴重なお話を聞くことができました。

 現在、日本の高齢化率は約三〇%、三千六百万人が六十五歳以上で、三人に一人が認知症に直面していると言われています。「はるちゃん」は義父母の介護と高校生の息子さんのお弁当を作りながらも、自分の異変に気づきました。家族の会の集まりに初めて行く日、それに反対していた夫が道に迷わないようにとバスの乗り場から降り場、そして会場までのメモを書いてくれていた話に胸が熱くなりました。誰しもが歳をとり、記憶力が低下して物忘れが激しくなり、頑固になったり怒りっぽくなったりします。自分はそうはなりたくないと念じる一方で、介護する人から介護される人になるこの現実を改めて考える研修会でした。

 四十年前、北海道社会福祉協議会の立野新平氏(後に「ぼけ老人を抱える家族の会」を作った人)にお会いした際にも感動した記憶が蘇ります。西村さんも立野氏に会ってこの道に入ったと言われ、一期一会の出会いで考え方や人生が変わるのだと驚きます。

 介護する人も介護される人も、同じ時間に等しく人生を送っています。それぞれの思いを理解して寄り添うことができれば自分自身の人生も豊かにできる、まさに自分の人生も一期一会であると考えながら、さわやかな気持ちで公民館を後にしました。

(広報おけと2024年9月号より)

まちづくり月記2024年8月号

 猛暑の中、第四十七回人間ばん馬大会はレースに懸ける選手たちの熱い魂と多くの歓声を残し、終了できました。実行委員会はじめ多くの方々のご尽力に感謝申し上げます。

 その三日後、半世紀ぶりとなる常元国有林で山火事が発生しました。消防団はじめ職員で初期の消火活動を開始しましたが、陸上消火だけでは困難と判断し、知事に防災ヘリ出動と自衛隊の派遣要請を行い、ヘリによる空中散布や山林をブルで道を拓きながら、消防団員等の懸命な消火活動により、七月十三日に完全消火を確認し、対策本部を解散しました。国・北海道・北見地区消防組合等の迅速な対応、町内事業者や町民皆様のご協力や応援をいただき、最小限の被害で収めることができました。後日、現地で消火作業に当たった方から「ラップに包んだ塩の効いたおにぎりがうまかった」と言われました。職員が炊き出しで握ったものだと判ります。その労いの言葉に感激し、「不幸中の幸い」として、私たち職員も貴重な経験を積むことができ、これからのまちづくりに生かしてまいります。

 戦後七十九年目を迎え、「戦没者追悼式」そして原爆の廃絶を訴える「反核平和の火リレー」が行われました。この風化しつつある戦争体験を後世に伝え、「決して繰り返してはいけない」そして「災害は忘れた頃にやってくる」、「平和や地域はみんなで守る」、この教訓を心に刻みます。

 多くの方々の協力でイベントを開催、災害を克服し「幸せは人がつくる」、置戸の町は、そして置戸町民はすごいなと改めて感じます。本当にご苦労様でした。

(広報おけと2024年8月号より)

まちづくり月記2024年6月号

 町長となって早いもので四年となりました。就任当初はコロナ禍で公共施設は閉鎖、集まりやイベントの中止とともに「不要不急」「三密」といった自粛や我慢を余儀なくされるマスク社会となり、布製の「アベノマスク」が配られたのが遠い昔のようにも感じます。

 当時、喫緊の課題として感染予防対策や経済対策に取り組み、政府からのコロナ交付金等の最大限の活用を図り、光ファイバー網やトレーラーハウスの整備等、未来への投資も含めて実施できました。また、勝山郵便局の老朽化による勝山公民館内への移転やAコープ店舗の設備更新等、様々な課題解決が図られたのは、町民の皆様はじめ、関係各位のご理解とご協力によるものと感謝申し上げます。

 本町の人口も二千六百人を割りました。人口減少は、日本全体の共通の問題であり、止めることはできませんが「ゆるやかな過疎」、そして住民が幸せに暮らし続けることができるまちづくりを進めなければならないと思います。過疎のまち農山村はまだまだコミュニティがあり、いざ困ったときには支え合い、自分より他人を心配する人が多い、そんな町で育ったことに感謝します。置戸町民の笑顔が、転入や移住を増やすことにつながると私は信じています。

 町政を担って、登山に例えれば「目の前の山の頂上にやっと着いたと思ったら、その向こうにはもっと大きな山がある」というのが実感の四年間でした。

 本年も豊穣の秋と、「まちづくり月記」を書き続けることができればと願い、雨上がりの空を眺めます。

(広報おけと2024年6月号より)

まちづくり月記2024年5月号

 最近、毎日のように高齢者の詐欺被害の記事が目に入ります。

 以前、「近所のおばあちゃんが高額な寝具を買わされている」と通報があり、訪問販売業者と対峙した経験があります。本人に「騙されているからもう買わないでね」と念を押して業者の訪問を待っていると、男性の業者が茶の間に入ってきました。役場職員を名乗る私を見て驚きながらも「本人が納得して買っており、立派な商売だ」と言う業者と言い争いになったところ、突然「この人は優しくていい人なの。悪く言わないで」とおばあちゃんが言いました。どっちのこと?と私もあっけにとられて、よくよく相手を見ると、悪人の風体ではなく、誠実そうな好青年に見えました。「とにかく、おばあちゃんはこれ以上布団はいらないのでもう来ないでください」と言うと、業者は帰っていきました。私はいいことをしたと自信満々で見ると、何も話さず寂しそうなおばあちゃんとの時間があり、あの時、もしかすると騙されていると思っていながらもいつも優しく話しかけ、心配してくれた業者の人に信頼や希望を見つけていたのかもしれないと思った記憶が蘇ります。

 高齢者の優しさや寂しさを利用して騙すようなことは悪い、子どもの頃は騙すより騙される方がまだ良いと教えられましたが、近年は騙すより騙される方が悪いという風潮に少し世の中がおかしいと思います。

 暮らしていて良かったというまちは優しい言葉と家族以外で心配してくれる人が大勢いるまちだろうなと思います。

(広報おけと2024年5月号より)

まちづくり月記2024年4月号

 バスを待つ新高校生の姿に「新年度だ!頑張るぞ」と元気をもらう四月、異動等で着任された多くの方々が挨拶に来られます。

 先月、中央公民館で「発達障がい」について講演を聴く機会がありました。この講師は二十数年前の管内のPTA研修会の講師で、教員として「校長室でお茶を飲むことが地域に開かれた学校だと勘違いしている保護者」、「きまりだからと生徒を指導できない先生」等々、歯に衣を着せず保護者や教員に堂々と話す姿に、私はこの先生が教える子どもたちがのびのびと学校に通う姿が想像され、「教育(教育者)には力がある」と胸が熱くなったことを忘れません。「ダメダメと子どもの個性を削って、小さなおりうさんにするのではなく、障がいも含めた個性を認め、褒めて伸ばして苦手なことを克服しながら大きな人間にするのが教育だ」と教員を退職しても教育に対する情熱は変わらない先生だなと再会に感謝しました。

 学校を卒業して社会人になっても様々な先生に会います。近所の人、高齢者や外国の方、子どもたちも私の知らない知識を持っていて、「え、本当」と驚くことも学びの一つです。そしてその人の発する思いや情熱に感動するのも学びです。あの人とまた会いたい、新たなことをもっと知りたいという気持ちにさせるのが教育です。そんな魅力的な人は突然現れ、大概が笑顔が素敵な人たちです。

 さあ、春です。新しい出会いと発見を求めて今日は外へ出ましょう。

(広報おけと2024年4月号より)
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